「けせ!進路」開発経緯

OVERVIEW

「選ぶ」のではなく「消す」ことで進路を絞り込む、高校生向け消去法特化の進路決定Webアプリ。要件定義・UX設計・AIエージェントの実装まで、フィードバックと修正を繰り返しながらv1からv6まで開発を進めている。

YEAR 2026

開発動機

高校一年生である実子の二者面談に行った際、進路希望調査に建築系の大学が第三希望まで書いてあったが、本人に聞くとそこまでの意気込みはなく『なんとなく嫌いではない』という温度感だった。

この時期に進路が明確に決まっている子が何人いるのか? 少なくとも当時自分は全く考えていなかったなど、進路決定の難しさを再確認した。

高校生の進路選択において「選びなさい」というプレッシャーが意思決定を難しくしている一方で、「絶対に違う」という消去は、多くの人が直感的にできる判断だ。

この非対称性に着目し、消去法を軸にした進路決定ツール作成を個人プロジェクトとして開始した。


https://visionary-cascaron-9c52b1.netlify.app/


問題定義

高校生が進路を決める際、選択肢が多すぎて「何から考えればよいかわからない」状態になりやすい。既存の進路情報サービスは情報量が多い反面、判断の負荷をユーザーに集中させる構造になっている。

「何が嫌かはわかる、何が好きかはわからない」という心理状態に対し、「医者にはならないだろう」「政治家はないな」など、消去という操作を主軸に据えることで、意思決定の入口を下げることを目指した。


開発の経緯

v1:コンセプト検証

消去法というコアコンセプトとスワイプUIの組み合わせを検証。

学問ジャンルをカードでスワイプし、残ったジャンルに対応する大学を表示する基本フローを実装。


v2:フロー整理

ざっくりとした要望を選ぶ初期画面があったが、「選ぶプレッシャー」をなくすというコンセプトと、最初に条件を選ばせる構造が矛盾していると判断したため、初期画面に設けていた「希望軸フィルター」を削除し、スワイプから直接始まる構成に変更。


v3:Phase構造の導入と情報設計

Phase1→Phase2の2段階構造を設計。

Phase1ではジャンル単位で絞り込み、「現在何校が残っているか」をリアルタイム表示することで、消去による絞り込みの手応えを可視化した。

Phase2では個別の学部カードではなく「学部系統」単位でグルーピングし、36カテゴリに整理。各カードに職業・資格・就職先・特徴を表示し、知識がなくても判断できる情報設計とした。


v4:データ拡充と基盤整備

142校・19ジャンル・36学部系統を実装。結果画面に国公私立フィルター・地域フィルター・ジャンルタブを追加し、最終的な絞り込みを追加。

またundoSwipe機能を実装し、スワイプミスに対応。

v5:文科省データの統合

大学データの信頼性を高めるため、文科省「令和6年度全国大学一覧」のCSVを取り込み、819校に拡充。地域フィルターを都道府県単位の多段プルダウンに変更するなど、細かなユーザビリティの改善を行なった。


v6:データ品質の改善と機能の深化

大学名のキーワードマッチングによる学部推定では精度に限界があると判断し、文科省ExcelをPythonで直接パースする方式に切り替え。789/819校(96.3%)で実際の学部データを取得した。

また、獣医・医・歯・薬など6年制プログラムは通常の4年制とは意思決定の構造が異なる場合、Phase2カードにステップ表示・ロードマップを追加。

133職種のJOB_DESC辞書、職業タグによる絞り込み、LINE/メール書き出し、地域マルチセレクトチップなども実装し、「絞り込んだ結果を誰かに共有する」というアウトプット導線を追加。


UX設計の骨格

意思決定を段階的に絞り込む3フェーズ構造で設計。

ステップ1:ジャンルスワイプ

約20の学問ジャンルを消去・キープ。残校数をリアルタイム表示し、消去の手応えを可視化。

ステップ2:学部系統スワイプ

残ったジャンルに紐づく学部系統をさらに絞り込む。6年制・国家試験必須の系統には専用ルートを表示。

ステップ3:結果・共有

大学一覧を地域・設置区分・職業タグで絞り込み。LINE・メールへの書き出しで保護者や先生との共有まで完結。

AI活用と開発方針

要件定義・UX構造・フィードバックによる修正判断は人間側で行い、AIエージェント(Claude code)を実装手段として活用。figmaなどのデザインツールは使用せずに実装指示に落とし込むプロセスを繰り返した。

単一HTMLファイルで完結する構成とすることで、サーバー不要・インストール不要の軽量な配布形態を実現している。

現在の状況と今後

現在v6まで開発完了。今後はユーザーテスト(高校生への実際の使用)を経て、偏差値表示・大学詳細・地域多段絞り込みなどを追加予定。

現状の課題

消去法というアプローチは『絶対にない』が明確なユーザーには有効だが、『あれもいいかも、これもいいかも』という状態の高校生には絞り込みが進みにくい。

これはツールの問題である以前に、高校一年生の進路選択という課題の本質的な難しさでもあり、現状の絞り込み精度の改善と、この状態のユーザーへのアプローチを次のバージョンの主要課題と捉えている。