非日常的な休息を体験できる「空 -kuu-」
糸で覆われている真っ白な空間の中で木の幹に腰掛け、上を見上げ、切り取られた空を見る。
するとだんだん、自分を取り囲む無数の白い糸のように、意識も空(くう)になってゆく。
課題の目的
学園祭という一層賑やかな環境の中、ベンチやカフェでの休息とは一味違う、いま、ここでしか味わえない「休息」があったら、経験型のひとつの文化祭での出し物として面白いのでは無いかと思い、制作を決めました。
木材と糸を使い制作した「空 -kuu-」は、何も考えず切り取られた空を見る、非日常的な休憩場所を経験できるインスタレーション作品です。緑の中、風でたなびく純白の糸に囲まれ、外界から遮断された空間で空を見上げていると、まるで魂が抜け落ちるかのように心も体も落ち着いていき、頭が空になってゆきます。
休息の解釈・デザイン
休息とは、周りに干渉されず、自分も自分に干渉しないことだと考えました。騒がしい空間にいる時に本当の意味での休息はできません。静かな部屋にいても、自分の考えていることの声が大きいと頭も心も休まりません。私はその2つをクリアするために、次のような形を考えました。
物理的に周りを遮断し、文化祭の騒がしい場所からは少し離れた人の少ない自然の中に設置することで、ひとりになる空間を作る。そして入った人は自然と穴の空いている上を見上げる形になり、絶えず変動する空を見ることで、それ以外の思考を少しでも止める。そして、白という軽い印象の糸が風でたなびくことで思考が空に飛んでいくような心地よさをを感じさせる。また、全体を糸で取り囲むだけだと、心理的に入るのが難しいと考え、入り口とした面の地面から40cmほど離れた場所の糸を切り、入り口のようにして中に誘導しやすくしました。
これらを加味し、このような形のインスタレーションになりました。
制作過程
まず木で縦2M20cm、横4辺80cmの立方体を作り白いペンキで塗り、純白まで漂白した光で輝く糸を約1万Km取り付けました。屋外でのインスタレーションということもあり、風や少しの加圧では倒れないよう、地面に釘を深く刺して固定し、安全を確保しました。
結果
緑の中での純白は存在感があり、文化祭中心の場からは離れていたにも関わらず沢山の人が気づいて興味を持って下さり、参加して頂けました。
サイズ : 2200×800mm / 素材 : 木材・ペンキ・釘・ボンド・ブライトスフ糸