FABQUEST2024 〜ムスビノワ〜
⒈ FAB QUESTとは
FAB QUEST(ファブクエスト)は、鎌倉の FabLab KAMAKURA を拠点とする中高生向け探究学習プログラムです。地域社会の課題を発見し、3Dプリンターなどのデジタルものづくり技術を活用して、解決策をかたちにします。生徒たちはチームで協力し、地域の人々とも交流を深めながら、課題発見から解決策の実現、発表までを実践的に学びます。
技術習得だけでなく、課題解決能力、創造性、コミュニケーション能力を育み、地域社会への関心を深めることも大切にしています。
より詳しい情報や最新の活動については、こちら をご覧ください。

⒉ チームかまもりについて
FAB QUESTでの活動を通じて結成された学生チームの一つが、私たち「チームかまもり」です。私たちは「子供たちの自然離れ」という課題に向き合い、その解決策としてデジタルプランター「ムスビノワ」を制作しました。
FAB QUEST 2024には、神奈川県・愛知県・福岡県から計9チームが参加し、鎌倉市の社会課題について半年間にわたり研究を重ね、3月に開催された最終審査会では、それぞれのチームが、最優秀賞・審査員特別賞の合計4賞を目指して発表を行いました。私たちのチームが公式の賞を受賞することはできませんでしたが、来場者による一般投票で2位という結果をいただくことができました。
なお、ここでは「自然教育」に焦点を当てた取り組みのみをご紹介していますが、活動初期には「防災」や「観光」といったテーマにも挑戦していました。これらも含めた一連の取り組みについては、別の記事で詳しくご紹介していますので、こちら もあわせてご覧いただければ幸いです。
⒊ プロダクト「ムスビノワ」について
たったひとつのプロダクトにたどり着くまでに、何度も立ち止まり、迷い、ぶつかりました。
それでも仲間とともに前を向き続けた、そのすべての時間が、「ムスビノワ」という形になったのだと思います。
これは、モノづくりを超えた、私たち自身の物語でもありました。
考えてはゼロに戻し、作っては壊す——そんな試行錯誤の連続だった私たちの軌跡を、楽しみながら読んでいただけたら幸いです。
⑴課題選定
FAB QUESTが始まったとき、私たちは「防災×観光」というテーマで活動をスタートしました。けれど、取り組むうちに、ふと立ち止まったんです。
「これって、本当に自分たちの手で変えられることなのかな?」と。
もっと、自分たちの力で確かに前に進めるテーマに挑戦したい。 そう思い直して、私たちは「自然を守る」という新しいテーマを選びました。
鎌倉の自然について調べるなかで見えてきたのは、自然を守る人たちが年々減っているという現実。 そして、未来の自然を守るためには、今の子どもたちが自然ともっと深くつながることが必要だということ。
でも、現実は簡単じゃありませんでした。
子どもたちには、そもそも自然に触れ合う機会が少ない──その事実にも気づかされました。
だから、私たちはこう考えました。
① 子供たちの自然離れの要因は、「自然と触れ合える場所を知らない」こと、そして「放課後の時間の過ごし方が変化している」ことにある。
② 子供たちの原風景に自然を取り戻すことが、将来の自然離れ解消への第一歩になる。
⑵インタビュー調査の実施
仮説を確かめるために、NPO法人かまくら冒険遊び場やまもりの理事長・坪井さんにインタビューをしました。
坪井さんは、「昔は放課後、公園で遊ぶのが当たり前だった。でも今は、習い事で忙しくて、外で遊ぶ時間が減っている」と話してくれました。
そして印象的だったのは、「自然と触れ合った体験は、大人になったとき、次の世代に自然を伝える力にもなる」という言葉。
自然と子どもたちの距離を縮めるには、無理に押しつけるのではなく、子どもたち自身が「やってみたい!」と思えるきっかけを作ること。
そのヒントをたくさんもらえた時間でした。

⑶ 朝顔栽培の課題から見えた目標
さらに、私たちは小学校の朝顔栽培に注目しました。でも、そこにも課題がありました。
朝顔を持ち帰ったものの、夏休みの間に枯れてしまい、しおれた鉢を持って登校する──そんな経験、あなたにもあるのではないでしょうか。
「どうすれば、植物を枯らさずに育てられるんだろう?」
「どうすれば、自然への愛着をもっと育てられるんだろう?」
そんな問いを胸に、
「子どもたちが自然に愛着を持てるプロダクトをつくろう」
と、チームで心を一つにしました。
⑷プロトタイプ「ムスビノワ」
「自然に愛着を持つ」って、ペットを大切に育てる感覚に似ているかもしれない。そんな発想から、プランターの外装を「犬の形」にすることを思いつきました。
さらに、ただのプランターではなく、水分量によってブザー音や光でお知らせする仕組みを搭載。まるで「水がほしいよ!」と、犬が話しかけてくるようなイメージです。
この「ムスビノワ」が、子どもたちにとって自然と関わる小さな入口になってほしい。そんな願いを込めて、試作を重ねました。
⑸ プロダクト講評
完成した「ムスビノワ」を持って、私たちはやまもりを訪れました。
子どもたちやスタッフの方に見てもらう時間。ワクワクと、緊張と、ちょっとした怖さも入り混じった、特別な瞬間でした。
スタッフの方からは、
「アナログとデジタル、どちらも取り入れているのがいいね」と言ってもらえました。一方で、「もっと幅広い展開ができるかも」と、新たな視点ももらいました。
子どもたちはというと──
「かわいい!」と目を輝かせる子もいれば、「犬だけ?猫とかないの?」と素直すぎる声も(笑)。
でも、そのすべてのリアルな反応が、「このままで満足しちゃだめだ」という気づきを与えてくれました。

⑹ プロダクト改良とイベント企画
実証実験を経て、私たちは「もっと愛着が湧くプロダクトにしよう」と改良を進めました。
たとえば、「情報が多いと、逆にやる気がなくなるかも」という声を受けて、水分量だけをシンプルに伝える仕様に変更。
また、自分だけのプランターを作れるワークショップを企画し、育てた植物で藍染め体験ができるイベントも考えました。
「育てる」だけでは終わらせない。自然とつながり、自然を楽しむ、そんな体験を届けたかったからです。
⑺ 最終審査会へ
半年間、走り抜けてきた私たち。「ムスビノワ」を武器に、最終審査会へ挑みました。
直前まで粘った発表練習。先輩たちのアドバイス。仲間との支え合い。
すべてを込めた発表は、手応え十分でした。
──だからこそ、結果発表の瞬間、自分たちの名前が呼ばれなかったとき、言葉を失いました。
会場を後にして、自然と集まった私たち。
誰かが泣き出すでもなく、でも、気づけばみんな、静かに涙を流していました。
「悔しい」
「もっとできたかもしれない」
「でも、ここまで本気でやってきたからこそ、流れた涙だった」
この涙の重みを、私たちはきっと一生、忘れない。

⒋ おわりに
最初は、右も左もわからないまま始まったFAB QUEST。
正直、「本当に半年も続けられるのかな」と不安に思っていた頃もありました。
でも、テーマ選びに悩んで、プロダクト開発で行き詰まって、夜遅くまでチームで話し合って、何度も壁にぶつかって、そのたびにまた、少しずつ、前に進んできました。
思い返せば、楽しいことばかりじゃなかったけれど、そのすべてが、かけがえのない経験になりました。
自分たちで考えて、動いて、形にして──
失敗も成功も全部、自分たちのものだったからこそ、ここまでたどり着けたんだと思います。
支えてくださったメンターの方々、インタビューに協力してくださった皆さん、そして、どんなときも一緒に走り続けたチームのみんなに、心から感謝しています。
この半年間で得たものは、単なる「成果」じゃなく、困難にも立ち向かえる「力」でした。
悔しさも、喜びも、すべて胸に刻んで──
ここからまた、一歩ずつ進んでいきたいと思います。
